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  上雄信内(JR北海道・宗谷本線)

1.幌延方面をのぞむ(木製の棒と電柱が見える)

 

2.天塩中川方面をのぞむ(一部草が途切れている)

 

3.駅前広場(私有地)

 

4.あえなく通過する普通列車

【駅概略】 ※2001年7月1日廃止

JR宗谷本線の雄信内−糠南間にあった無人駅。雄信内駅から2.2kmの地点にあった。駅周辺はもともと「タンタシャモナイ」と呼ばれ,古くから開拓民が入り,道の開拓地整備事業地区にも指定された。おそらくはそんな周辺住民の便を図るため,1956年に仮乗降場として開業,JR移行時には駅に昇格した。しかしその一方で過疎化と離農が進み,利用者は減少。ついには周囲に2軒の牧場を数えるのみとなり,利用者がほとんどいなくなったため,2001年6月いっぱいで廃止された。駅の周囲には個人所有の牧草地が広がり,駅に通じる道がなかったため,私有地を通らないと到達・脱出できない駅として有名だった。国土地理院のホームページで公開されている地図にはいまだに記載されている(2005年10月現在)。

 

【駅データ】 ※現在は廃止

駅名

上雄信内(かみおのっぷない)

所在地

北海道天塩郡幌延町雄興
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1956年5月1日仮乗降場として開業,1987年3月31日駅に昇格

乗降客数

駅名のルーツ

 

【停車本数データ】 ※現在は廃止

1972年10月

下り3本,上り5本(仮乗降場)

1987年4月

3往復(駅)

2001年3月

2往復(駅)

 

【訪問記】(2005年10月)

JR雄信内駅で下車。駅前突き当りを左に折れ,途中で宗谷本線の旧線跡を探索しつつ,舗装された小道を黙々と歩いてきた。次に目指すは4年前に廃止された上雄信内駅の跡地である。

今日は国土地理院のホームページで公開されている地図を印刷して持ってきた。驚いたことに,そしてありがたいことに,この地図には上雄信内駅がいまだに記載されている。仮乗降場として開業した上雄信内駅は非常に簡素なつくりで,その痕跡をたどるのは非常に難しいだろうから,細かい位置まで特定できるこの地図は頼もしい限りだ。

さて,いま歩いている舗装路の周囲には牧草地が広がっている。そのうちの一画に5,6頭の牛がけだるく寝そべっている。そのうちの1頭が見慣れぬ旅人のお出ましに気づき,のっそりと立ち上がった。ほかの牛たちも追随して一斉に立ち上がる。

何をするんだろうとのん気に彼らを眺めていると,彼らは見る間に集団でこちらに迫ってきた。これは怖い。本当に怖い。・・・・・・が,こちらも人間だ。この程度でビビッていては名誉に関わる。それに有刺鉄線が張られているからどうせここまでは上がって来れまい。だからこのまま冷静に歩き続けようと思う。

・・・・・・頭ではそう思うけど,身体のほうは言うことを聞かない。やっぱり怖いのでついつい早歩きになってしまう。そんな私のすぐ横を,彼らは集団でぞろぞろ追いかけてくる。本当ならもっと早く歩けるのだろうけど,私の歩調に合わせてゆっくりついてくる。これが「牛歩」か,と思う。やや気持ちに余裕も出てきて,ファンに追っかけられる大スターの気分になってきた。

やがて牧草地は尽き,彼らもスターの追っかけを断念。ちょっと残念だけど,内心ほっと胸をなでおろす。そのまま舗装路を歩き続けると,やがて右手に牧場が見え始め,何のためらいもなく歩ける地点にまで到着した。

地図によると,いま自分が立つ場所の北側に広がる牧草地の向こうに駅があったらしい。見晴るかすと,確かにその付近の線路際の草むらが一部途切れ,そこにぽつんと電柱が立ち,そこに向かって電線が牧草地の中を横切っている。あまりに不自然なので非常に分かりやすい。ホームは撤去したものの,駅に電気を供給していた電柱や電線までは撤去しなかったのだろう。

ここまでは舗装された公道で,よそ者が歩いても何ら問題はなかった。しかし,ここから駅跡までの約100mは私有地である。さて,どうしたものか。・・・しばらく考えたが,考えるまでもなく答えは最初から1つしかない。そう,腹をくくって突っ切るしかない。

周囲に人も牛もいないことを確認してから,駅跡に向けて一歩を踏み出す。しばらくは牛糞まみれる農道が続き,そのまま惰性で牧草地に突入,そのままわき目も振らずに線路脇の電柱まで一気に駆け抜けた。・・・土地所有者の方,本当にすいません。

線路脇で立ち尽くす。私有地を通らないと行けないということでずっと訪問をためらっていた上雄信内駅。しかしいまやその魅惑の駅跡はすぐ目の前に広がっている。長年の憧れの地についにたどり着き,どうしても感動を禁じ得なかった。

駅跡をつぶさに観察する。簡易なホームがあったという現役時代は知らないが,一部草が途切れているので,ホームがあったと思われる場所は簡単に推定できる。そしてその脇には所在なげに立つ木製の棒。定規のように目盛りが入っているので,積雪深を計るためのものだろう。

天塩中川方面から普通列車がやって来た。奇妙な旅人を尻目にあっさり通過していく。この駅が現役であったとしても,この時間帯の列車は通過していたはずだ。どのみち通過する列車だった,というよりは,それ以外に少しでも停車する列車があったことのほうが信じられないような,そんなところにある上雄信内駅だった。


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