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  三井金属鉱業・神岡鉄道(浅井田−猪谷)

1.神岡市街に残るガーター橋

 

2.国道471号線沿いに残る橋台跡

 

3.坂巻川橋梁跡(遠景)

 

4.坂巻川橋梁跡(近景)

【路線概略】 ※1967年3月31日廃止

神岡鉱山で産出する銅や亜鉛鉱などを輸送するため,大正時代に敷設された軌間610mmの鉄道。全盛期には約40kmの路線長を誇り,旅客輸送も行っていた。しかし安全確保と路線保守に手を焼き,また国鉄神岡線が全線に並行して建設されることが決まったこともあり,1967年3月までに段階的に廃止されていった。

 

【路線データ】 ※現在は廃止

区間

浅井田(あさいだ)−猪谷(いのたに)
路線周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

営業キロ

約30km

開業

1937年3月

運行本数

3往復(1956年12月現在,旅客列車のみで)

廃止

1967年3月31日

 

【訪問記】(2005年7月)

飛騨古川駅から濃飛乗合自動車の路線バスに乗って約40分,終点の神岡に着いた。ここからは時間の許す限り,旧・神岡鉄道の廃線跡をめぐることにする。

参考文献に示された地図に従い,とりあえず高原川を渡って対岸の山際に向かう。なかなか対岸に渡る橋が見つからなかったが,現・神岡鉄道の神岡鉱山駅前に立派な橋が架かっていた。

持っている地図は縮尺が小さいので細かいところまでは分からない。が,橋を渡って右手へ,そして山を登る方向へと歩を進める。長年の経験と野生の勘だけが頼りだ。

と,いかにも廃線跡といった風情の狭い小道が,高台から神岡市街を見下ろすように続いている。「あった,これだ!」すっかり気をよくして,見晴らしのいい廃線跡の小道を軽快に進んでいった。

途中,車道を越えるガーター橋が残っている(写真1)。多少手が加えられているものの,鉄道橋の面影は十分だ。さらに進むと今度は道幅がやや広くなっているところに出た。いかにも駅跡といった感じだが,墓地になっているので写真を撮るのはやめた。

それにしても冷静に考えると,ガーター橋以外に鉄道の痕跡は全くない。雰囲気のある小道を坦々と歩いているだけだ。が,それだけで十分楽しい。それに,この先に最大の遺構が待っている。

こんな調子で歩き続け,神通川水系砂防事務所の横まで来た。ここで小道は途切れているので右手に折れ,現・神岡鉄道の奥飛騨温泉口駅近くに架かる橋から高原川の上流側を眺めてみた。美しい橋梁跡が見えるはずである。

・・・? あれっ?? おかしい。何も見えない・・・。

もう撤去されてしまったのだろうか?あきらめ切れないので,橋を渡り切って左に曲がり,対岸を一生懸命に眺めながら高原川の左岸をさらに上流側へと進んでいく。かなり歩いたところで,対岸に遠く小さく橋らしきものが目に飛び込んできた。

・・・! あった!! あれだ!!!

大いに興奮し,慌てて対岸に渡れる道を探す。さっき渡った橋に戻ればいいのだが,もう結構な距離を歩いてきたことだし,旅先特有の些細な勇気も手伝ってさらに先へと進んでみた。

ようやく見つけた貧弱な橋を通って川の右岸側に渡り,国道471号線を神岡市街へと引き返す。もちろんタダでは引き返さない。痕跡がないかどうかじろじろ見回しながら,である。おかげで,味わい深い橋台跡を発見することができた(写真2)。

こうして,さっき対岸から小さく見えた橋跡まで戻ってきた。国道沿いの広場から見下ろしてみる(写真3)。まばゆいばかりの陽光に包まれて,神々しささえ感じられた。かなり遠回りをしてたどり着いた分だけ,感動もひとしおだった。

せっかくだからもっと間近で見てみようと,農道を通って橋の袂まで下ってみる(写真4)。橋脚は苔むし蔦が這い,桁は草に覆われ途中でぷつりと切れている。往時はこの橋を貨物列車が行き交っていたはずだ。その割には貧弱に見えるが,これからもこのままの姿で旧・神岡鉄道の歴史を語り継いで欲しいと思った。

以上で廃線跡探索を切り上げることにする。再び車道に上がり,現・神岡鉄道の奥飛騨温泉口駅に向かう。そのとき通った道は,さっき通った道だった。そう,「ここで小道は途切れている」と上で書いた,まさにその地点である。あそこで右手に折れずに,まっすぐ進んでいれば簡単に橋跡までたどり着けたのだった。

今さら文句を言ってもしょうがない。文句を言う相手もいない。おかげで良い教訓を得たと思うことにして,現・神岡鉄道の奥飛騨温泉口駅の待合室でジュースを飲みつつ一服する。やがて到着した列車の折り返しで,猪谷に向かった。

列車に揺られながら,まだまだしつこく対岸をじっと眺める。旧・神岡鉄道が対岸を走っていたからだ。が,完全に自然に還ってしまったのか,夕闇迫っていたからか,何も見つからなかった。

・・・・・・。

・・・想像したくないが,来年の12月には両岸に廃線跡が続く異様な光景がこの高原川沿いに展開されることになるだろう。


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