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  餘部(JR西日本・山陰本線)

1.餘部鉄橋(有名な撮影地から)

 

2.餘部鉄橋(集落へつながる山道の途中から)

 

3.餘部鉄橋遠景

 

4.浜坂方面から迎えにやって来た列車

【駅概略】

JR山陰本線・浜坂駅から東へ2駅目,10.7kmの地点にある無人駅。日本最大のトレッスル橋(長さ310.59m,高さ41.45m)として有名な餘部鉄橋のすぐ西側の,集落を見下ろす小高い丘の上にある。山陰本線開業時には設置されていなかったため,余部の集落の人々は鉄道を利用するのに餘部鉄橋を渡り,トンネルを抜けて隣の鎧駅まで歩いたという。そのため地元から駅設置の陳情があり,1959年に開業に至った。住民が駅の建設を手伝う様子がホーム横にある壁画に描かれている。開業当初は普通列車でも多くが通過していたが,現在は全普通列車が停車している。

1986年12月28日,餘部鉄橋を通過中の回送列車が強風にあおられて転落し,直下の工場を直撃,6名の死者を出すという悲惨な事故が発生した。以後,運行基準が見直され,風速20m以上で列車の運転を取りやめることになったが,それゆえ列車の運休や遅れが頻発するようになった。そこで,現在のトレッスル橋の南側に,風速30mまで列車の運行が可能なPC(プレストレスト・コンクリート)橋を建設する計画が持ち上がり,2007年春から工事が始まる予定となっている。

 

【駅データ】

駅名

餘部(あまるべ)

所在地

兵庫県美方郡香美町香住区余部
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1959年4月16日

乗降客数

駅名のルーツ

『和名抄』には余戸(アマルヘ)とあり,端数の民戸をいう。

 

【停車本数データ】

1961年10月

3往復

1968年12月

5往復

1987年4月

11.5往復

2006年11月

11往復

 

【訪問記】(2006年10月)

あの有名な餘部鉄橋が来年の春で架け替えになるという。鉄橋のような工学的なものにはあまり興味のない私でも,あの赤くて武骨な餘部鉄橋には心惹かれるものがある。それに,ここ最近の旅でお馴染みの友人も行ってみたいと言う。そこで,「鉄道の日記念西日本乗り放題きっぷ」を手に,5年ぶりに餘部を再訪することにした。

京都から山陰本線の普通列車を乗り継いで豊岡に到着。いよいよ餘部鉄橋を渡る普通列車に乗り込む。今日は休日なので混んでいるかと思っていたけど大したことはなく,海側のボックス席を確保できた。

豊岡を発車した普通列車は,私たちをじらすようにゆっくりと走り,こまめに各駅に停車していく。玄武洞,城崎温泉,竹野,佐津・・・。どの駅でも乗降は数えるほどしかなく,けだるさが周囲を支配している。ところが,あと2駅で餘部だというところの香住駅で,とんでもない数の乗客が乗り込んできた。ほぼ同じ年代の方々の団体で,お互いちょっとした知り合いのように見える。察するに,旅行会社が企画した「餘部鉄橋ツアー」に参加し,旅行日程に従って「列車で餘部鉄橋を渡ろう」とするツアー客の一群と思われる。

一気に活気を帯びた普通列車は,次の鎧駅に停車してすぐに発車し,日本海沿いの短いトンネルを立て続けに4つ抜けると突然空中を走り始めた。眼下には海沿いに並んだ家々が小さく見える。岸壁に打ち寄せる荒々しい波も小さく砕けて見える。車内からは一斉に歓声が上がった。

やがて元通り陸地に着地すると,すぐが餘部駅であった。ツアー客ともども下車する。その数の多いことといったら餘部駅のホームを黒山で埋め尽くすほどだ。5年前のひっそりとした様子を知っている私はただただ唖然とした。

間もなく上り列車が通過するので,まずは餘部鉄橋の有名な撮影地に向かう。と,ここでもおびただしい数の人がカメラを手に列車の通過を待ちわびていた。筋金入りの鉄道ファンよりも,ごくごく普通の観光客のほうが圧倒的に多い。皆が餘部鉄橋に酔いしれ,あるいは餘部鉄橋に取り付かれ,以てにわか鉄道ファンに変貌し,あるいはにわかカメラマンに変貌していた。

以前からの鉄道ファンであり(プチ)カメラマンである私たちも餘部鉄橋に酔いしれ取り付かれ,以て写真を撮りまくる。有名な撮影地から,眼下の集落に通じる山道の途中から,鉄橋の真下から,鉄橋を遠くに望む場所から・・・・・・。どこに行っても人がいる。たくさんいる。そしてカメラを向けている。鉄橋を撮影している。餘部鉄橋フィーバーの凄まじさをいやというほど実感した。

撮影しつつ,余部の集落を散策する。しっとりとした味わいのある余部の集落は好ましいたたずまいで,ここでも詳しく紹介したいのだが,鉄橋フィーバーに沸く今日はその普段着の姿をあまり見せてはくれない。かの有名な餘部鉄橋を抱えているので,今日のような賑わいも余部集落の一面かも知れないけれど,やはり本来の姿ではないと思う。ので,またいつかフィーバーが一段落したときに再訪し余部集落の様子をしたためることにして,今回の訪問記はこれで終わろうと思う。


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