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  浅岸(JR東日本・山田線)

1.現ホーム(盛岡方面をのぞむ)

 

2.加速線跡

 

3.旧ホーム跡

 

4.宮古方面から迎えにやって来た列車

【駅概略】 ※2016年3月26日廃止

盛岡市内ながらも北上山地の深い山中にある無人駅。もともとX型のスイッチバックを有し,駅員が常駐して列車交換が行われていたが,スイッチバックは1982年に廃止され,ホームは本線上に移された。駅周囲は完全な山中で,人家はほとんど見当たらない。スイッチバックを有していたことや周囲の状況など,隣の大志田駅と非常によく似ている。1日あたりの平均乗車人員が1名未満にまで減少したことから、2016年3月に廃止された。

 

【駅データ】 ※現在は廃止

駅名

浅岸(あさぎし)

所在地

岩手県盛岡市新庄字中津川
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1928年9月25日

乗降客数

駅名のルーツ

中津川の上流の浅い川岸に開けた集落であるという自然地名。

 

【停車本数データ】 ※現在は廃止

1930年10月

4往復

1944年12月

7往復

1956年12月

4往復

1968年12月

5往復

1987年4月

6往復

2007年10月

下り2本,上り3本

 

【訪問記】(2007年8月)

15時49分。JR山田線の盛岡行き上り単行列車がブルンブルンとその体を震わせてゆっくりと宮古駅のホームを出発した。列車はすぐに深い山中へと吸い込まれていった。

人跡まれな山間部を行く。閉伊川と国道106号線がつかず離れず寄り添っている。忘れた頃にちょっとした集落が現れ,あわせて雰囲気の良い小駅に停車する。が,乗降客の姿はなく,すぐに発車する。そうするうちにも少しずつ勾配をのぼっていることが,このディーゼルカーが絶え間なくあげる唸り声から知れる。やがてサミットである区界峠をいくつかのトンネルで抜けると,にわかに下りとなって唸り声が消えた。

17時25分。今回の目的地である浅岸駅に到着。駅で降りるだけなのになぜか小っ恥ずかしい気持ちで同行者とともに下車する。次の上り列車が来るまでの約3時間,じっくり浅岸駅を満喫しようと思う。

この浅岸駅を訪問するのは非常に難しい。車を使うとすれ違いも困難な曲がりくねった山道を走らねばならない。そんなところなので,もちろん路線バスはない。バスが必要となるような集落もない。かといって,以前大志田駅を訪れたときのように自転車で来ようにも,レンタサイクルのある盛岡の市街地からは遠すぎる。結局,列車で来ることに落ち着くのだが(鉄道駅なのだから当たり前だ),なんせ停車本数が極端に少ないので,浅岸駅を十分満喫しようと思えば今回立てたようなプランにせざるを得ない。・・・滞在時間の半分が夜という問題があるのだが。

浅岸駅といえばスイッチバックだろう。急勾配でも列車の行き違いを可能にするため,X型のスイッチバックが設けられていたという。が,列車本数が減り,列車性能が向上するにつれ,無用の長物となり,隣の大志田駅と同じように廃止されてしまった。

暗くなる前に見るべきものを見ておきたい。ので,さっそくその痕跡を探索し始める。本線上にある現在の簡素なホーム(写真1)から盛岡方面の山際を凝視してみると,加速線の跡と思われる築堤がある(写真2)。雑草に覆われていてかなり分かりづらいが,水平になるように造られているのが確認できる。

翻って,現ホームから宮古方へと続く砂利道を行く。・・・と,これまた雑草に覆われていて見過ごしそうになるが,スイッチバック時代の旧ホームが残っている(写真3)。大志田駅と違って線路は残っていないが,ここまで歩いてきた砂利道こそスイッチバックの引込み線だったようだ。

駅名標などなど,何か当時の遺構が残っているかもしれない。好奇心の赴くまま,ホーム跡に生い茂る雑草を掻き分けて中に分け入ってみる。砂利道で待つ同行者はそんな私を見てただただ呆れている。結局,Tシャツとズボンに雑草を引っ掛けただけで,何の成果もないまま探索を終えた。

そのまま砂利道を進み,小さな川を小さな橋で渡って舗装路に出る。駅前通りだというのに,人の気配はまったく感じられない。むしろ,サルとかクマとかが出てきそうだ。それでも,好奇心の赴くまま,左手のほうに行ってみる。・・・も,何もない。何もありそうにない。あえなく今来たほうへと引き返した。

今度は反対の右手のほうに行ってみる。・・・と,すぐに右手に古びた木造の建物が現れた。その前には雑草の生えた広場がある。どうやらここは廃止された小学校の跡のようだ。人家もまれなこんなところに小学校が必要だとは到底思われないが・・・。

だんだん暗くなってきた。日中でも薄ら暗い山間部に夜がやって来ると,辺りは漆黒の闇となる。代わりに,空には満天の星が輝いている。これ以上の探索を諦め,おとなしく現ホーム横の待合室におさまった。

あまりに暇なので,紙と鉛筆だけでできるシンプルなゲームを始める。時の経つのも忘れてそれに興じること約1時間半,そろそろかと思ってホームに出てみると,闇の彼方からガタンゴトンという音がかすかに聞こえてきた。

20時9分。待ちに待った迎えのディーゼル列車が,静かに浅岸駅のホームに滑り込んだ(写真4)。列車の前面から放たれる2つの灯りは,漆黒の闇を切り裂いて強烈にまばゆいも,どこかあたたかく感じられた。


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