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  飯井(JR西日本・山陰本線)

1.東萩方面をのぞむ

 

2.飯井の集落

 

3.駅への入口

 

4.長門市方面から迎えにやって来た列車

【駅概略】

JR山陰本線の長門市駅から東萩方面へ2駅,11.5kmの地点にある無人駅。飯井の集落をのぞむ高台に,1面1線のホームとこじんまりとした待合室がある。路線開通時には設置されていなかったが,1964年に新設された。以前は普通列車でも通過するものがあったが,現在は全普通列車が停車する。飯井の集落の中央部を貫流する「水無浴」という小川が萩市と長門市を隔てる境界となっており,飯井駅はその萩市側にある。駅名をローマ字表記すると「ii」と2文字になり,日本で最も短い駅の一つとして有名(ちなみにひらがな表記だと津(つ)駅が最短)。

 

【駅データ】

駅名

飯井(いい)

所在地

山口県萩市三見
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1964年1月21日

乗降客数

駅名のルーツ

イイは「山手のほう」か。あるいは「段丘などの小高いところにある田や土地」か。また「共同作業」をいうユイの転か。

 

【停車本数データ】

1968年12月

5往復

1987年4月

6.5往復

2006年11月

11往復

 

【訪問記】(2006年11月)

飯浦駅から下り普通列車に乗車。途中,東萩駅で下車し,松下村塾や明倫館跡,高杉晋作・木戸孝允旧宅,萩城跡などなど萩市内に点在する名所旧跡をレンタサイクルでまわったあと,再び下り普通列車に乗り,飯井駅で下車した。

同行者とともにホームに降り立つ。駅はちょっとした高台にあり,こじんまりとした飯井の集落を見渡せる。さっそく散策に出た。

駅から細い坂道を下ると,駅前通りに出た。・・・と,「水無浴」という小さな川が流れており,小さな橋が架かっている。この小川が市境になっているようで,駅のある側が萩市,反対側が長門市らしい。一般に行政区分は経済的なつながりや生活圏などを考慮して決められるので,こんな小さな集落のど真ん中を市町村境が貫いているというのは異例だ。どうしてこんなことになったのだろう。その昔,飯井の集落を二分するような諍いでもあったのだろうか。何か深い事情がありそうだが,本日遠路はるばるやって来たよそ者たる我々は,市境たる小川の両側に分かれて「われ 萩市民」「われ 長門市民」などとのん気にやっている。あるいは橋の両側を行ったり来たりして,「萩市に引っ越した」「今度は長門市に引っ越した」などとやっている。

・・・・・・それにしても飯井の集落の子どもたちはどこの小学校に通っているのだろうか。公立の小学校である限り,自分の住んでいる行政区の小学校に通うことになるはずだ。飯井の集落に小学校はないので,近隣の小学校に通っていると思われるが,何せここは集落の中央を市境が貫いているような場所である。市境を成す「水無浴」の東側に住む子どもが萩市立の小学校に通い,一方でそのすぐ西側に住む子どもが長門市立の小学校に通うなんてことになっているのだろうか。すぐお隣に住む同級生と違う小学校に通わなければならないなんて,なんだかかわいそうだなぁと思う。

・・・・・・。

小川の流れに沿って民家の間をすり抜けて行くと,日本海に出た。日本海からは白波がほぼ等間隔でこちら側に押しては返している。その一部が小川に分け入ってそのまま遡っていこうとするが,山から海へ流れ込もうとする小川の勢いには敵わずついにはかき消されてしまう。・・・が,それでもときに飛びぬけて大きなエネルギーを持った波がやってきて,これまでになく長い距離を遡っていく。そんな波と小川とのせめぎ合いがなぜだかとてもおもしろくて,いつまでもずーっとぼーっと眺めてしまった。

ふと我に返り,集落内を徘徊しにかかる。といっても本当に小さな集落で,特に何があるというわけでもないので,10分もあれば一周できてしまう。一周してしまうと,これはもう本当にどうしようもなくやることがなくなってしまった。当初の計画では次の下り普通列車まで約2時間ここに滞在する予定だったが,残念ながらまだあと1時間以上もある。残念ながらこれ以上ここにいるのは得策ではないと思われる。一方で,上り普通列車は幸いにもあと15分ほどでやってくるようである。なので,同行者とあれこれ相談するまでもなく,自然とその上り列車に乗って隣の三見駅に行くことになった。飯井の駅と集落にはなんとなく申し訳ない気がしたけれど,これでいいのだと思った。


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