ホーム > 秘境駅の情景 > 上厚内

ホーム > 廃駅跡の情景 > 上厚内【現役時代の様子】


  上厚内(JR北海道・根室本線)

1.駅舎(正面側から)

 

2.駅舎(ホーム側から)

 

3.帯広方面をのぞむ

 

4.駅前通り

 

5.釧路方面から迎えにやって来た列車

【駅概略】 ※2017年3月4日廃止

JR根室本線・池田駅から東へ5駅,39.2kmの地点にあった無人駅。もともと信号所として設置され,のちに駅へと昇格した。比較的交通量の多い国道38号線沿いに、2面2線のホームと木造の駅舎があった。1日平均の乗車人員が1名以下と極端に少なくなったことから、2017年3月に廃止された。

 

【駅データ】 ※現在は廃止

駅名

上厚内(かみあつない)

所在地

北海道十勝郡浦幌町上厚内
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1926年8月1日

乗降客数

駅名のルーツ

厚内川の上流に所在することによる。

 

【停車本数データ】 ※現在は廃止

1930年10月

4往復

1944年12月

5往復

1956年12月

5往復

1968年12月

7往復

1987年4月

6.5往復

2006年1月

6.5往復

 

【訪問記】(2006年1月)

稲士別駅から普通列車に乗車。そのまま根室本線を東進し,上厚内駅に到着した。

上厚内駅には3年前にも訪問したことがある。そのときも今回と同じく真冬の寒い時期だった。雪に埋もれた味わい深い木造駅舎が脳裏に焼きついている。あれから3年,久しぶりにあの木造駅舎に会いたくなった。それに,再訪すればまた何か新しい発見があるかもしれない。そういうわけで,勇んで上厚内駅に降り立った。

まずはその木造駅舎をじっくり観察する。北海道の厳しい風雨風雪に耐え,よくぞ今まで生き延びてくれたと感謝したくなるような味わい深い駅舎だ。これだけでも十分この駅を訪問する価値があると思う。

さて,前回は駅舎とその周辺を見ただけで終わったが,今回は上厚内の集落を散策してみようと思う。まずは駅舎を出て右手,東へ向かう。駅前通りの左右に建物が並んでいるが,いかにも活気が感じられない。ほとんどが無人の廃屋と化しているように見受けられた。

引き返し,駅前広場を越えて,今度は西へと向かう。と,今度はすぐに集落は途切れ,右手におかしな建物と記念碑のようなものが目に飛び込んできた。「おかしな」と言いつつ,基本的にいつも記念碑とセットで現れるそいつの正体は長年の経験でだいたい分かる。・・・・・・そう,廃校だ。

「また廃校か・・・」と思いながら,校庭の片隅にある記念碑に近づこうとする。のだが,その手前に,尻尾を振りながら鎮座している一匹の犬がいる。ひもにつながれていない彼は私を不審人物と断定し,その一挙手一投足に警戒の目を注いでいる。私が構わず近づいていくと,案の定「ワンワンッ!ワンワンッ!」とけたたましく吠え始めた。

犬の仕事は不審者に吠えかかることだから結構なことだけど,やはり気分のいいものではない。そこで,彼と対峙しなくてすむよう,校庭に入って迂回し,校舎前を通って記念碑に向かうことにした。

こうして無事にたどり着いた記念碑だが,周囲を深い雪で覆われていて表側を遠目に見れるに過ぎない。何とか裏側も見たいものだと思い,雪の中に足を突っ込んでみる。案の定,ずぼっと積雪に足を取られ,すぐには身動きの取れない惨めな状況に陥った。

と,そんなときに限って,背後から何やら動物の駆けてくる足音が聞こえてくる。慌てて後ろを振り返ると,案の定あの犬だった。雪に足を取られて二進も三進もいかない私に向けても,しっかり「ワンワンッ!ワンワンッ!」と吠えかかってくる。これはもうどうしようもない。諦めて前を向きなおし,目の前にある記念碑に見入って嵐が過ぎ去るのを待つことにした。

・・・・・・しばらくそのまま記念碑に見入っていると,いつの間にかあの犬はいなくなっていた。ふぅ〜っ,やれやれ・・・・・・。犬がいなくなってにわかに元気づいた私は,雪の中から足を引っこ抜き,そのまま勢いで記念碑の裏側に回り込み,何とか目的を達することができた。・・・・・・こんなに苦労した割に大したことは書かれていなかったが。

すっかり満足し,再び慎重に足を運んで記念碑から離れる。それにしてもあの犬はどこへ行ったのだろうかと周囲を見回してみるも,全く気配を感じない。が,念には念を入れて,来たときと同じように校庭を迂回して駅へと戻ることにした。

無事に駅前広場まで戻る。味わい深いあの木造駅舎が目の前に現れ,すっかり安心した。・・・・・・ところへ,再び何やら動物の駆けてくる足音が聞こえてくる。「まさか・・・」と思って慌てて後ろを振り返ると,案の定あの犬だった。

「またこいつか・・・」と内心うんざりする私。「襲われるのでは・・・」とも内心びびる私。が,彼のほうはそんな私のすぐ後ろでピタッと足を止め,お行儀よく座っている。しかも,さっきまでとは打って変わって,全く吠えようとしない。

「どうしたんだろ」と不思議に思う。が,吠えないにしくはない。安心して再び前を向いて駅に向かおうとする。・・・と,あの足音もぴったり私の後ろをついてくる。また振り返る。彼も足を止める。

「どうしたいんだろ」とそのまま立ち止まっていると,彼はゆっくりと私に近づいて来た。そして驚いたことに,「クンクン,クンクン」と私の足元を嗅ぎ始めたのである。「なんだなんだ!?」とびっくりする私。・・・がそれも束の間,彼はすぐにぷいと身を翻して遠ざかっていってしまった。

「なんだったんだろ」と彼の不可解な行動に唖然とする。しばらく考えて,はたと思いついた。もしや,廃校の記念碑に見入っていた私(実際には嵐が過ぎ去るのをひたすら待っていた私)を見て,彼は私をこの地に関係のある仲間と判断したのではないだろうか?だから私に吠えかかるのをやめ,それを確かめるために私の匂いを嗅ぎに来たのではないだろうか?が,その結果は芳しくなく,そっぽを向いて行ってしまった・・・・・・。

・・・・・・,・・・・・・,・・・・・・・・・。

・・・・・・ごめんね,私は上厚内に縁もゆかりも何もない,一介の旅人に過ぎないんだよ・・・・・・。

心の中でそう呟いてから再び前を向き,目前に迫った上厚内駅へと吸い込まれていった。


ホーム > 秘境駅の情景 > 上厚内

ホーム > 廃駅跡の情景 > 上厚内【現役時代の様子】