ホーム > 秘境駅の情景 > 金野

  金野(JR東海・飯田線)

1.天竜峡方面をのぞむ

 

2.駅前広場

 

3.温田方面から迎えにやって来た普通電車

【駅概略】

JR飯田線の天竜峡駅から豊橋方面に2駅目,2.6kmの地点にある無人駅。天竜川沿いの深い山中にあり,駅の周囲には何もないが,駅から山道を行くと金野(こんの)の集落に出る。2009年7月現在,朝の上り快速列車が停車する一方で,普通列車でも停まらないものがある。

 

【駅データ】

駅名

金野(きんの)

所在地

長野県飯田市千栄
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1932年10月30日(三信鉄道の停留場として)

乗降客数

駅名のルーツ

古くは「きんのう」といったところ。金渋(かなしぶ)の出る野原が開けたことを示す地名。

 

【停車本数データ】

1940年10月

?往復(三信鉄道の停留場)

1944年12月

9往復

1956年12月

10往復

1968年12月

下り9本,上り11本

1987年4月

12往復

2009年7月

8.5往復

 

【訪問記】(2009年9月)

千代駅から普通電車に乗車。立ったまま揺られることわずか2分,次の停車駅である金野駅で下車した。

今日はこれまで田本駅千代駅と下車して訪問記を書いてきたが,この金野駅でも全く同じことを繰り返す。この金野駅,とんでもない山中にあり,駅の周囲には何もない。草木が血気盛んに生い茂って,蝉が甲高く鳴いているのみだ。鉄道駅がこういう状況下にあるというのは本当は驚くべきことなのだけど,この4時間の間に3度目ともなると,「またか」としか思わなくなった。天下の飯田線と言えど,3連発で訪問すると不感症になってしまうようだ。

特に何も思わないまま,淡々とホームを降りて駅前広場に出ると,自転車置き場が目に留まった。しかし,使われている形跡のない朽ちた自転車が数台,半分倒れてくちゃくちゃと放置されているのみである。晴れた9月の平日の昼下がりでもこうなのだから,もはや日常的に金野駅まで自転車でやって来て駅を利用する客はいないのかもしれない。

自転車置き場の横から,小道が出ている。地図によると,この道は坂を上がって「金野(こんの)」という集落に通じている。金野(きんの)駅で下車したからにはこの集落を訪問するのが筋だろうが,やや遠い。それより,金野集落の手前に「よけ」という魅惑的な名の集落があるのが気になる。漢字があてがわれる地名が多い中,かなのまま現代まで残っている「よけ」地名は貴重だ。地名の由来は皆目見当つかないけれど,とりあえず行ってみようと思う。

蝉の大合唱の中,この小道を上がっていく。・・・と,10分も行かないうちに急に前が開け,わずかな平地に民家と小さな畑が現れた。「よけ谷」とあり,「金野卵 販売致します」と書かれた看板が立っている。金野駅の紹介でよく出てくる有名な卵(というか看板)である。

さらに行く。向かって右手の斜面下に民家の屋根が見えている。一方,左手には,斜面上方に向けて伸びる階段が現れた。地図によると,この上には神社があるようで,「よけ」集落のほぼ中心に位置している。ちょうどいい。「よけ」集落訪問記念として,「よけ」を鎮守するこの神社にお参りしていこうと思う。

階段を上がっていく。すぐにクモの巣に引っかかり,立ち往生する。そばに転がっていた木の枝を持つ。枝を体の前で振り回しながら進む。5メートルに1回ぐらいの割でクモの巣を切り裂いていく。少なくともここ数日は人跡ないらしい。ようやく頂上に着き,一息つく。

一応到着はしたが,拝殿らしきものは見当たらない。代わりに,やや横長の祠のようなものがぽつんと鎮座している。今までに見たことのない雰囲気の神社である。地図がなければ,ここが神社だとは思えなかっただろう。「よけ」の人々が簡易的に祀った神社なのだろうか。特に強調するほどのことではないけれど,何となく「よけ」の集落の心に触れた気がして,私は満足して金野駅に引き返していった。


ホーム > 秘境駅の情景 > 金野