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  糠南(JR北海道・宗谷本線)

1.天塩中川方面をのぞむ

 

2.待合室

 

3.天塩中川方面から迎えにやってきた列車

【駅概略】

JR天塩中川駅から北へ3駅,16.1kmの地点にある無人駅。もともとは仮乗降場として設置されたため,小さな待合室と板張りのホームという非常に簡素なつくりとなっている。周囲には数軒の牧場があるだけで,あとは無人の原野と牧草地が広がっている。

 

【駅データ】

駅名

糠南(ぬかなん)

所在地

北海道天塩郡幌延町糠南
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1955年12月2日仮乗降場として開業,1987年3月31日駅に昇格

乗降客数

駅名のルーツ

ノッカ・アン(仕掛け弓の糸のあるところ)からきたと思われるが,諸説ある。

 

【停車本数データ】

1972年10月

4.5往復(仮乗降場)

1987年4月

4往復(駅)

2005年10月

2往復(駅)

 

【訪問記】(2005年10月)

JR問寒別駅で下車。貨車駅舎内で昼食を済ましたあと,糠南駅に向けて歩き始めた。

糠南駅にはもうこれで3回目の訪問である。しかもいつも問寒別駅とセットで訪問しているので,問寒別−糠南間の道も歩き慣れたものである。

「なぜ3回も行くのか?」「何がそんなにおもしろいのか?」と聞かれても答えに窮する。「なぜか行きたくなるから。」としか言いようがない。今回もなぜか無視できなくて,プランに組み込んでしまった。この微妙な気持ち,一度実際に訪問して頂ければご理解頂けるのではないかと思う。

さて,歩き慣れた問寒別駅周辺には商店や床屋があり,交番や学校なんかも揃っていて,立派な集落が形成されている。そんな問寒別の小学生は非常に礼儀正しい。前回,道ですれ違った小学生3人にいきなり挨拶されてびっくりしたことがある。見知らぬ人間に挨拶してくるぐらいだから,これはもう相当の礼儀正しさと言わざるを得ない。しかし,幸か不幸か,今回は小学生とはすれ違わなかった。

やがて問寒別の集落は尽き,問寒別川を渡るとにわかに登り坂になる。この登り坂はすぐに尽き,今度は下り坂になるがそれもすぐに尽きる。そこから右手に牧場を見ながら道なりに進み,突き当たりの十字路を左に折れると,そこには見慣れた,だけど何回見ても愛くるしい景色が広がっていた。

「景色」に「愛くるしい」という形容詞をつけるのは国語的に問題がありそうだけど,それ以外に適当な形容詞を思いつかないのだからしょうがない。とにかく,そこには無人の原野が広がっていて,その中に糠南駅が見えている。

「見えている」といっても,板張りのホームと小さな待合室があるだけだから,存在感は全くない。自分の存在を積極的にアピールしようとする気概も感じられない。そんな,あまりに貧弱であまりにちっぽけな糠南駅なのだけど,やっぱりちゃんとそこに存在していて,北の大地にしっくり溶け込み,厳しい大自然にじっと耐えている。なんてけなげで,なんていじらしいんだろう・・・・・・。

一度足を止め,目の前に広がるそんな愛くるしい景色を一通り眺めてから再び歩き出し,ついに糠南駅に到着した。

道路(踏切)からホームまで,特に道はない。線路脇のたよりない草地を行くしかない。そうしてようやくたどり着いたところで待っているのは板張りの簡素なホーム。そして,とても待合室だとは思えない待合室。見上げると,「ヨド物置」と書いてあった。

待合室に入ってみる。ここが待合室であることを必死にアピールするかのように,時刻表やJRからのお知らせなどが貼ってある。時刻表を見ると,全部で4つしか数字が入っていなかった。

その脇には,全国の物好きたちが書き記していった駅ノートがある。こんな駅に心惹かれる物好きは私以外にも結構いるらしく,なかなか書き込みが多い。じっくりと駅ノートに見入る。

そうするうちに,迎えの列車がやって来た。糠南駅に停車する貴重な4本のうちの1本である。この列車は「なぜこんなところでブレーキをかけるんだよ」と運転手に不満げに,それでもちゃんと目の前で停まって扉を開いてくれた。そんな几帳面な列車に心の中でありがとうとつぶやきながら乗り込む。と,今度は「こんなところから乗る物好きがいるんだな」と驚いた様子で,それでもちゃんといつも通りにのっそりと動き出してくれた。


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