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尾盛(大井川鐵道・井川線) | ||||||||||||||||||||||||||||||
2.駅前広場
3.ホーム南東側にある建物基礎跡
4.旧ホーム上の駅名標と倉庫 |
【駅概略】 大井川鐵道井川線の終点・井川駅から2駅,7.7kmの地点にある無人駅。完全な山中にあり,駅から通じる道もないため,鉄道以外でのアクセスはほぼ不可能といえる。それゆえ利用者もほぼ皆無だが,駅西側を流れる大井川でのダム建設関係者や林業従事者でにぎわった時期もあったという。鉄道駅で一般に見られるホームもあるが現在は使用されておらず,代わりに砂利の敷き詰められた非常に低いホームが線路沿いに作られている。
【駅データ】
【停車本数データ】
【訪問記】(2008年10月) JR金谷駅に到着。同行者とともに,接続する大井川鐵道に乗り換える。 大井川鐵道は愉快な路線だ。まず,千頭駅までの大井川本線は,路線自体はごくごく普通だが,走っている車両がバラエティに富んでいる。有名なSL列車だけでなく,京阪や南海,近鉄で昔走っていた特急車両が再塗装すらされることなく走っている。さらに,千頭駅から終点・井川駅までの井川線は大井川に沿って走る山岳路線であり,途中には日本で唯一のアプト式鉄道があることで知られている。乗り換え時間があまりないので,慌ててJR駅を出て大井川鐵道駅に入って駅弁を購入して1日フリー切符を求めてホームに出ると,近鉄特急が発車時刻を待っていた。 乗り込んでほどなく発車した老列車は,すぐに左に大きくカーブすると,のどかな田園地帯を大井川に沿って走り始めた。さすがは静岡県,茶畑が多い。・・・・・・乗っている列車が近鉄特急で,すれ違う列車が京阪特急だったりするので,どこを走っているのか一瞬分からなくなるけれど。 徐々に大井川の川幅が狭くなって千頭駅に到着。ここで井川線の可愛らしいミニ車両に乗り換える。井川線については,列車のドアが手動だったり,途中でアプト式区間を通過したりと,何かと話題の多い路線で,書き始めたらそれだけでこのページが埋まりそうだけど,ここはあくまで尾盛駅を紹介するページなので,一切省略してさっさと尾盛駅に向かうことにする。 こうして千頭駅から約1時間20分,尾盛駅に到着した。「降りる」とあらかじめ伝えておいたからか,車掌が走ってきてドアのロックを外してくれた。本当なら明らかに用のないこんな駅で降りるのはかなり恥ずかしいのだけれど,最近は同好の士が増えてきているというし,つい数週間前には毎日新聞に尾盛駅の記事が出ていたりもしたから,気兼ねなく降りることができた。 ホームに降り立つ。高さのない,砂利が敷き詰められたホームで,猫のトイレのようだ。一方で,線路の西側には今は使われていないごくごく普通のホームがある。あちらのほうに降ろしてくれればヒトの心地がして気分良いのに,と思う。今走っている車両にしてはホームが高すぎるのだろうか。 周囲を見回す。井川線は大井川沿いの急斜面にへばりつくようにして敷設されているが,この尾盛駅の付近だけは等高線の間隔が疎になってなだらかになっていることが分かる。地図を見ただけでも「ちょっとここらで休憩を」と言い出したくなるような場所にちょうど駅があることになる。・・・・・・が,やっぱり深い山中にあり,休憩はしても居住はしたくないようなところである。 ホームから南に向かう。味わい深い木造の建物がある。保線小屋だろうか。その近くには,何らかの建物があったと思われる基礎の跡がある。今は鉄道関連の施設以外には全く人の気配がしない尾盛駅だが,以前はダム建設関係者や林業従事者が入ってそれなりに賑わっていたという。彼らの住んでいた住居跡だろうか。 ひるがえって,ホームから北へ向かう。・・・も,特に見るべきものは見当たらない。しょうがないので,そこから西側へと続く斜面をよじ登ってみる。・・・と,ここにも何らかの建物があったと思われる造成地のような痕跡が認められた。そこから駅へと獣道のような頼りない,だけどそれとはっきり分かる小道が続いている。いずれも今は雑草が繁茂するばかりで,往時をしのぶ由もないけれど,ここにもダム建設や林業に関連する施設があったのだろうか。 この時点で尾盛駅に降り立って15分,早くもやることがなくなってしまった。駅から脱出する道がないので,どこか散策に出ることもできない。本当はあと1時間後にやってくる井川行きの列車に乗って終点まで乗り通すつもりだったけど,それでは時間を持て余しそうだ。・・・と,旧ホーム上に掲げられた時刻表を見ると,間もなく千頭行きの列車がやってくることに気付いた。これに乗って奥大井湖上駅まで引き返しても,最初の予定通り井川行きの列車をつかまえることができる。なら,どうせなら,ということで,迷う暇もなくやって来た千頭行きの列車に迷うこともなく乗り込み,尾盛駅をあっさり後にした。 |
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