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  竜ヶ水(JR九州・日豊本線)

1.駅遠景(中央やや左の海岸沿い)

 

2.ホーム(鹿児島方面をのぞむ)

 

3.交換するきりしま85号ときりしま6号(左手の斜面に砂防ダムが見える)

 

4.桜島を背景に

【駅概略】

JR鹿児島駅から日豊本線を1駅,6.9kmの地点にある無人駅。2面2線のホームと小さな駅舎がある。火山噴出物から成るシラス台地の縁部が錦江湾に落ち込む海沿いの場所にあり,駅の目の前は錦江湾,背後は比高約300mの急斜面となっている。そのような立地条件も災いして,1993年8月6日,豪雨により大規模な山崩れ・土石流が発生し,立ち往生した西鹿児島行き普通列車に土石が直撃したが,乗務員のとっさの機転により被害は最小限に抑えられた。駅周辺は民家等も少なく,普通列車でも通過するものが多い。

 

【駅データ】

駅名

竜ヶ水(りゅうがみず)

所在地

鹿児島県鹿児島市吉野町
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1915年8月7日(国鉄鹿児島本線として)

乗降客数

駅名のルーツ

竜ヶ宮三船神社の名水・竜ヶ水の名にちなむ。

 

【停車本数データ】

1925年4月(鹿児島本線)

9往復

1944年12月

9往復

1956年12月

15.5往復

1968年12月

下り15本,上り17本

1987年4月

28往復

2010年3月

17往復

 

【訪問記】(2010年2月)

重富駅から国道10号線をバスで10分ほど南下したところにある心岳寺駅跡地を訪問した後,さらに国道を南下する。次に目指すは竜ヶ水駅である。

竜ヶ水駅と言えば,8.6水害を思い出す。平成5年8月6日,集中豪雨に見舞われた竜ヶ水地区では,山崩れが土石流となって流れ下り,集落や日豊本線を襲った。ちょうど竜ヶ水駅に停車中だった列車に土石が直撃したが,幸いにも乗務員の機転により乗客は避難した後だったという。

・・・・・・そんな緊迫した状況を思い浮かべるのは困難なほど今日は穏やかに晴れ渡っている。目の前には桜島が冬の陽光を浴びており,ときおり白い噴煙を上げている。

国道10号線を道なりに進んで大崎ヶ鼻をぐるっと回り込むと,左手の海の向こうに竜ヶ水駅が小さく見えてきた(写真1)。「見えてきた」といってもどこだかすぐには分からないほどちっぽけなホームらしきものが,火山噴出物から成るシラス台地が海に向けて一気に落ち込む急斜面の直下にか弱く横たわっている。持参した地形図を見ても,風力発電所用風車や地震火山観測所のある台地面から海にかけて等高線が密にびっしりと並んでいて,勾配が非常に急であることが分かる。今は斜面が緑に覆われているし,今日は快晴でもあるので,のどかな海辺の平和な一風景に過ぎないけれど,ちょっとでも強い雨が降ればすぐにでも斜面が崩れて土石が襲ってくるんじゃないか・・・・・・そんなことを考えてしまう眺めではある。

そのまま国道10号線を道なりに進み,国道から少し高台に上がったところにある竜ヶ水駅に到着した(写真2)。2面2線のホームに簡素な白い駅舎があるだけの,シンプルな構造である。

下り線ホームに大きな石碑がある。見ると,「竜ヶ水災害復旧記念碑」とあり,竜ヶ水地区における8.6水害の惨状から復旧にいたるまでの経緯が書かれている。この場所が災害の現場であったことを再認識した。

駅舎を通過して,駅西側を通る細い駅前通りに出る。・・・と,左から順に,「急傾斜地崩壊危険箇所」「急傾斜地崩壊危険区域」「土石流危険渓流」の看板が並んで立っている。この場所が災害の危険地帯であることを再々認識した。

そこから右に向かうと,今度は「砂防指定地」の看板があり,わずかな谷地形に立派な砂防堰堤が整備されている。8.6水害のときの写真を見ると,ここはまさしく山崩れが発生していたところだ。今は砂防堰堤のおかげで危険性は感じないが,この場所が災害の現場であったことを再々々認識した。

駅に戻る。鹿児島方面から特急「きりしま6号」がやって来て,停車駅でもないのに竜ヶ水駅の上りホームで停まった。しばらくすると,今度は隼人方面から特急「きりしま85号」がやって来て,下りホームに入った。どうやら列車交換らしい。やがて両列車は別れを惜しむこともなくあっさりそれぞれの目的地に向けて発車して行った。

その様子を跨線橋の上から眺めている(写真3)。そのまま周囲を眺めてみるも,民家は非常に少ない。8.6水害の後,土石流対策により住民の多くが移転したためという。竜ヶ水駅も,普通列車ですら通過するものが多くなってしまった。国道を車が頻繁に往来するほかは,すっかり寂しくなってしまった。

・・・と,隼人方面から普通列車がやって来た。目の前で停車し,扉が開く。乗降客はもちろん私一人である。私を乗せた列車は,錦江湾沿いを鹿児島市内に向けて快走する。今日はこのあとバスに乗って,特攻隊基地で有名な知覧を訪れようと思う。


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