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  田本(JR東海・飯田線)

1.ホーム(温田方面をのぞむ)

 

 

2.駅全景(天竜峡方面をのぞむ)

 

3.田本の集落

 

4.駅遠景(中央を流れる天竜川の向かって右側斜面ふもとにあるはず)

【駅概略】

JR飯田線の温田駅から天竜峡方面に1駅目,2.0kmの地点にある無人駅。天竜川沿いの急斜面に張り付くように狭い1面1線のホームと小さな待合室があり,「断崖絶壁の駅」として有名。そんな立地なので駅周辺には何もないが,駅から続く急な山道を15分ほど歩くと田本の集落に出られる。2009年7月現在,朝の上り快速列車が停車する一方で,普通列車で停まらないものもある。

 

【駅データ】

駅名

田本(たもと)

所在地

長野県下伊那郡泰阜村田本
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1935年11月15日(三信鉄道の停留場として)

乗降客数

駅名のルーツ

その地区の田の中心になったと解釈できる。

 

【停車本数データ】

1940年10月

?往復(三信鉄道の停留場)

1944年12月

9往復

1956年12月

10往復

1968年12月

10.5往復

1987年4月

12往復

2009年7月

8.5往復

 

【訪問記】(2009年9月)

豊橋駅6時ちょうど発の飯田線・一番列車に乗車。1時間ほど走って豊橋・豊川・新城の市街地を抜け,さらに1時間ほど走って山間部を抜けると,天竜川に沿って走り始める。よくぞこんなところに鉄道を,とただただ驚くようなところを進んでいく。こまめに現れる小駅の立地もそれに負けず劣らずものすごい。

今日はその中でもトップクラスの立地条件にある田本駅から始めようと思う。豊橋を出て約3時間,そろそろ尻が痛くなってきたところで田本駅に到着。恥ずかしい思いをかみ殺して下車した。

車内には同業者の姿が多く見られたので,もしかしたら他に降りる人がいるかもと思っていたが,私以外に下車客はいない。さっとドアが閉まって電車が走り去ると,あたりには私一人だけとなった。ツクツクボウシとアブラゼミが夏の終わりを惜しんで鳴いている。

この田本駅,天竜川左岸側の急斜面のふもとに張り付くようにして狭いホームと小さな待合室がある(写真1)。平地はホーム以外に全くなく,背後は急斜面だ(写真2)。田本駅の立地条件のものすごさについては,いろいろな人がいろいろな所でいろいろな形でいろいろな表現でいろいろ書いている。私がここでこれ以上書いてもそれの繰り返しになるだけだろう。もとより,文字による表現は,2万5千分の1地形図での表現に遠く及ばないと思われる。

ので,「断崖絶壁にある」とだけしたためて田本駅をあとにし,さっさと次の目的地に向かおうと思う。実際,ホームと待合室以外に何もないのだから,やることがない。一通り写真を撮り終えると,滞在わずか10分で田本駅を出ることにした。

ホームの温田寄りからコンクリート擁壁の裏を通って急斜面に這うように道が出ている。階段を上がって飯田線のトンネルの上を通過すると,道が2手に分かれる。地図によると,右に行けば天竜川沿いを行って小さな橋を渡り,対岸の神子谷(みこのや)という集落を通過して温田駅に至る。一方,左に行けば急な坂道を上がっていったん田本の集落に出,そこから温田駅へと下って行くことになる。私の次の目的地は温田駅のさらにちょっと南にあり,右に行ったほうが道が比較的平坦で楽だと思われる。・・・が,ここの駅名は「田本」。「田本駅に行って来た」というからには,田本の集落を通過せねばならぬ。

そんな妙なこだわりを胸に,左の道を選ぶ。道はすぐに急な上りとなり,息が切れる。ただ,意外なことに道は心なし舗装されており,心なし歩きやすい。無心で歩くこと約15分,にわかに前方が開け,田本の集落を貫く広い車道に出た。

その場所には,「←田本駅」と手書きされた控えめな看板がある(右写真)。また,向かいには「鮮魚・精肉・仕出し 奈川商店」と,やや離れて「お食事処 焼肉 奈川」がある。田本駅の紹介で必ず出てくる有名なお店だ。私とは逆に,田本の集落から駅に向かう際には,目印になると思われる。

広い車道を温田駅に向けて歩き始める。駅はとんでもないところにあったが,田本の集落はそれなりに開けている。地形図を見ても分かるように周囲は緩斜面になっており,水田と民家が広がっている。田本駅からやって来た身からすれば別天地だ。大沢橋を渡ったあたりで後ろを振り返ると,田本の集落が見渡せた(写真3)。

さらに歩く。泰阜南小学校の前を通過すると,右手に天竜川が見えてきた(写真4)。地図によると,天竜川の向かって右側(左岸)の斜面ふもとに田本駅があるはずである。必死に目を凝らしたものの,残念ながらホームその他を確認することはできなかった。が,田本駅の立地条件のすさまじさを物語る一枚ではある。

さらに歩く。にわかに道が細くなり,民家が連なるようになってきた。商店もある。温田駅はもう間もなくである。


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