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  峠下(JR北海道・留萌本線)

1.駅舎

 

2.留萌方面をのぞむ

 

3.深川方面をのぞむ

【駅概略】

JR留萌駅から東へ3駅,21.8kmの地点にある無人駅。上下互い違いの2面2線のホームと木造駅舎があり,深川−留萌間で唯一交換可能な構造となっている。駅名の通り,空知と留萌を分ける峠を留萌側に下ったところにあり,山に抱かれた非常に静かな環境にある。駅前に人家は数軒ほどしかない。

 

【駅データ】

駅名

峠下(とうげした)

所在地

北海道留萌市留萌村峠下
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1910年11月23日(留萠線として)

乗降客数

駅名のルーツ

ルチシ・ポク(峠の下)が意訳されたものという。

 

【停車本数データ】

1925年4月(留萠線)

3往復

1944年12月

6往復

1956年12月

7往復

1968年12月

9.5往復

1987年4月

8.5往復

2005年10月

8.5往復

 

【訪問記】(2006年10月)

特急で深川に到着。乗客のまばらな留萌行き普通列車に乗り換えさらに揺られること約30分,峠下駅で下車した。

峠下駅には今年の2月にも訪問している。廃止が決まっていた隣の東幌糠駅に歩いて向かうため,ここで下車したのだった。このときはあまり時間がなかったので,全くといいほど峠下駅のほうは見ていない。このままではあまりに申し訳ないので,半年後の今日,再びやって来たのだった。

今日はあいにく朝から土砂降りの雨となっている。峠下駅に到着する頃には止むかと期待していたけれど,一向に止む気配がない。今日は時間に余裕があるので,駅舎の軒先でしばらく待つことにする。

これが他の駅だったりしたら,降り止まない雨に苛立っていただろうけど,ここではなぜかそれがない。空には暗い雲が垂れ込み,山裾には白い霞が立ち込め,激しい雨があらゆるものに容赦なく叩きつけている。駅周辺は深い山に抱かれており,人の気配は全くない。そんな中,もの言わぬ木造駅舎がただ一人,私のためだけに身を挺して風雨をしのいでくれている。それに甘えてただ一人,軒下で雨粒がひっきりなしに落ちてくるのを眺めていると,なぜだか雨が降っていて良かったと思えてきた。まだこのあと向かうべき場所があるのだけれど,まだまだしばらく止まなくていいぞ,とすら思えてきた。

・・・ ・ ・  ・ ・ ・ ・  ・  ・  ・  ・  ・   ・   ・    ・    ・

小一時間もすると,小降りになった。駅舎から飛び出し,駅前通りを西に向かう。それに沿ってわずかばかりの民家が並んでいるが,やはり人気はなく,ひっそりしている。

やがて前方に国道233号線が見えてきた。前回は素直にこの国道を行ったけど,今回はその手前で右に折れ,踏切を渡ってさらに奥へと進む。こちらは舗装も荒れた細道で,さらに人気は感じられなくなる。

曲がりくねったこの細道を道なりに進み,橋を渡るとすぐにT字路に達した。その一角に,見るからに色褪せた,大きな建物が2つ並んでいる。嫌な予感がして,この建物の裏側にまわってみる。と,思わず「あっ」と声を上げそうになった。目を覆いたくなるような光景がそこには広がっていたからである。

仲良く2つ並んだ建物のどちらも窓は無残に割れ,窓枠は外れて落ちかけ,きれいな青色をしていたはずの屋根はくすんで所々くぼんでいる。それらを背景にして,また錆び付いた遊具を隅に配して,一面に生い茂る雑草が秋風にカサカサ揺れている。そう,ここは広場の隅にある記念碑が示すように,廃止された峠下小学校の跡なのだった。

あまりの荒れ果てように,言葉を失う。そして,そのままそこに立ち尽くす。こみ上げる思いはたくさんあるけれど,もはや言うまい。言いたいことはこの廃校跡が全て言ってくれている。無言でしばらくそこに立ち尽くした私は,ふと我に返り,ついには身を翻し,次の目的地に向けて一歩を踏み出した。


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