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  豊清水(JR北海道・宗谷本線)

1.駅舎

 

2.美深方面をのぞむ

 

3.廃牧場ならぶ駅前通り

 

4.音威子府方面から迎えにやって来た普通列車

【駅概略】

JR美深駅から北へ4駅,19.6kmの地点にある無人駅。1面2線のホームと小さな駅舎があり,美深−音威子府間で唯一交換可能な構造となっている。駅前は廃牧場があるほかは畑や原野となっており,付近に人家は見えない。

 

【駅データ】

駅名

豊清水(とよしみず)

所在地

北海道中川郡美深町清水
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1946年10月10日仮乗降場として開業,1950年1月15日駅に昇格

乗降客数

駅名のルーツ

豊かな清水が湧き出るところからつけられたものか。地名は「清水」。

 

【停車本数データ】

1950年10月

4往復

1956年12月

7.5往復

1968年12月

7往復

1987年4月

6.5往復

2006年10月

5.5往復

 

【訪問記】(2006年10月)

まだ薄暗い旭川駅の一角に,2両編成の列車が停まっている。6:05発の名寄行き普通列車である。列車番号的には名寄行きだが,実質的に稚内行きである。

まだ薄暗い旭川の街を走り出した普通列車は,上川盆地から名寄盆地にかけて開けた町をすり抜け,名寄で後ろの1両を切り離すと,天塩川に沿ってさらに北上し始めた。たまに小さな無人駅が現れ,その一つ一つに律儀に停車していくが,車内放送が虚しく流れるだけで乗車も下車もなく,車内の空気を入れ替えただけですぐに発車していく。

美深を出て約20分,豊清水駅に到着した。恥ずかしげに切符を見せ,孤独に下車する。有効長の比較的長い交換設備を有する駅だが,今回は交換する列車はなく,わずか2人にまで減った乗客をそのまま乗せてそそくさと走り去っていった。

ただ一人取り残された私。まずは駅舎の中に入ってみる。と,その一角に,色褪せた張り紙が張ってある。見ると,「通学バス 15:01 16:36 駅前に到着。」とある。到着する列車の時刻に合わせて通学バスが運転されていると思われるが,持参した今月号の時刻表で確認してみると,この時刻じゃ列車との接続は非常に悪い。接続のことは何も考えてないと言っていい。後になって私の所有する限りの古い時刻表で照合してみると,1987年頃にはこれでまあまあ良い接続となることが判明した。こんな20年前のバスの時刻が今も張られているということは,逆に言えば今はもう通学バスは運転されていないということなのかもしれない。

高台にある駅舎を出て,十数段の階段を降りて,駅前通りに出る。と,通学バスではなく町営バスの「楠27線」停留所があった。ひどく錆び付いていて時刻表もなく,とても現役のものだとは思われない。そしてそのすぐ前に広がるは2軒ほどの廃牧場。遠目には現役に見えなくもないが,近づけば打ち捨てられたものであることが歴然としてくる。さらに,今立っている舗装路もアスファルトのひび割れが著しい。バス停や牧場,舗装路といった人工物に囲まれていながら人の気配を全く感じないこの状況は,一切の人工物がない薄暗い山奥のただ中にいるよりも寂しく,侘しい。

今さらながら告白すると,実は4年前の夏にも豊清水駅で下車したことがある。そのときは駅前に赤い自転車が停めてあり,散歩がてらそれを取りに来た母娘の姿があった。(ちなみにそのとき私は,不審者と間違われぬよう駅舎内に身を潜めていた。)4年前の記憶と照らし合わせて駅舎や駅前の様子に変わりはなく,そのせいで母と娘の姿が消えたことだけがやたらと強調されてきて,にわかに色づき始めた周囲の山々の風景ともあいまり,ますます寂しく,侘しくなった。

駅前から駅前通りを南に向かう。両サイドは雑草が生い茂る原野であったり,原野とあまり見分けのつかない牧草地であったり,あるいは一目でそれと分かる畑であったりする。さらに行くと,農業用倉庫もある。神社もある。人家も若干はある。ないのは人の姿だけであった。

ひるがえって,駅から北へと向かう。小さな川を渡ってすぐを右に折れ,細い坂道を登っていくと,やがて国道40号線に出た。その一角に人家が若干あるが,やはり人の姿は見当たらない。

特に大きな見所もなく,再び駅へと戻ってきた。さっきからこうして駅周辺をうろちょろしているのは,昔この辺りにあったという豊清水小学校の跡地を探し当てたかったからだ。別に廃校マニアではないけれど,駅や集落の栄枯盛衰を知る上で廃校は良い指標になるということを最近の旅でうすうす感じていて,「あった」という事前情報を仕入れたからには見ておきたかったからである。

それも叶わず,まもなく迎えの列車の時刻となった。まだ諦めきれずに駅舎のある高台から駅前通りを眺めていると,駅前すぐ南側の雑草地の一角に,ブランコのようなものがあるのが目に留まった。ブランコのようであってブランコそのものではなさそうだが,今は雑草地に過ぎないこの一角に昔は何らかの施設があったと思われる。よく見ると,一部は柵で仕切られてもいる。ここがお目当ての小学校跡地だとは思われないけれど,目の前の廃牧場といいこの雑草地といい,全てがまた元の自然に還りつつあることだけは確かなようだった。


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