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談話室その1

乗客1人の記録

鉄道の旅をしていると,心ならずもときどき体験するのが「乗客1人」状態。

そう,自分以外に誰も客が乗っていない状態です(ただし,もちろん運転士さんは乗っている)。

大量輸送を使命とする鉄道としてはあるまじき状態です。

乗っている側にしても,何ともいえない侘しさがこみ上げてきます。

このページでは,私が今までに体験した「乗客1人」の記録をまとめてみました。

 

No.

時期

会社名

路線名

区間

距離(km)

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1

2001・春

JR東海

名松

伊勢奥津→?

 松阪行き最終列車で体験。途中で男性が1人乗ってきたが,終点・松阪までそれ以上客は増えなかった。

2

2002・冬

JR北海道

石北本

上白滝→上川

34.0

 上白滝での旭川行き始発兼最終列車で体験。上白滝駅の唯一の「普通の」乗客であるおじさんと入れ替わりに乗車したところ,誰も乗っていなかった。乗客1人の最長記録を樹立。

3

2002・5月

JR東日本

岩泉

岩手和井内→岩手大川

15.3

 岩泉行き始発列車で体験。茂市で乗っていた乗客は1人また1人と下車し,岩手和井内でついに乗客1人に。峠越えして最初の駅・岩手大川からは,岩泉へ通う学生がぞくぞく乗車。岩泉に着くころには,立ち客が出るほどだった。

4

2003・冬

JR北海道

宗谷本

幌延→下沼

7.8

 午後最初の列車で体験。幌延始発だが,誰も乗ってなくて本当にびっくり。が,切符入れを頂いた駅員さんには別に驚いた様子もない。普段からこんな状況なんだろうか?南下沼まで歩く私を下沼で降ろした列車は,むなしく空気のみを運んでいった。

5

2003・冬

JR北海道

根室本

浦幌→上厚内

11.8

 午後最初の列車で体験。池田で乗っていた客が駅に停車するごとに下車していき,浦幌でついに誰もいなくなった。最後に残った私も,次の上厚内で下車。この列車は誰も客を乗せずに発車していった。

6

2003・冬

JR北海道

石勝

追分→楓

31.1

 楓行き始発兼最終列車で体験。厳密に言うと,追分から新夕張まではJRの職員が数人乗車していた。新夕張からは純然たる乗客1人状態。(※楓駅はすでに廃止されました)

7

2003・夏

JR北海道

宗谷本

糠南→雄信内

5.7

 糠南に停車する午後の列車で体験。大好きな糠南駅から乗車したところ,誰も乗っていなかった。駅前に廃屋がひしめく次の雄信内で何とか客が乗ってきた(ただし同業者と思われる)。

8

2003・夏

JR北海道

宗谷本

上幌延→豊富

21.3

 ↑の雄信内で乗車してきた同業者らしき男性は,カメラを手に上幌延で下車。また乗客1人になった。予想を裏切り,次の幌延でも誰も乗って来ず。数的には決して豊富ではなかったものの,豊富駅でやっと乗客が現れた。

9

2003・夏

北海道ちほく鉄道

ふるさと銀河

陸別→置戸

32.0

 唯一の北見行き完全各駅停車タイプの列車で体験。乗っていた客は全員陸別で下車し,代わりに私1人を乗せて発車した。先ほど訪問した分線,川上両駅や,廃屋が目立つ小利別駅では当然のごとく乗客ゼロ。人恋しくなった置戸でようやく数人乗ってきた。

10

2003・夏

JR北海道

札沼

石狩月形→新十津川

13.8

 新十津川行き始発列車で体験。バスでやって来た石狩月形から勇んで列車に乗り込んだところ,誰もいなかった。そのまま終点・新十津川まで乗客は現れず。

11

2003・夏

くりはら田園鉄道

くりはら田園鉄道

石越→荒町

1.6

 石越を午前8時半ごろ発車する列車で体験。始発の石越で誰も乗っていなかったのでかなり驚いたが,次の荒町でおばさんが乗ってきた。その後は常に数人の乗客を維持。

12

2003・冬

阿佐海岸鉄道

阿佐東

甲浦→海部

8.5

 午後4時ごろの列車で体験。海部で特急列車に接続する列車だったが,途中の宍喰でも乗客なく,始発から終点まで貸切り状態だった。

13

2003・冬

JR四国

土讃

大歩危→豊永

11.2

 阿波池田を午前8時半ごろ発車する列車で体験。大歩危で旅館の従業員とおぼしきおばさん達が全員下車。ロングシートの車内には私1人が取り残された。2つ先の豊永からはぽつぽつ乗客が現れた。

14

2004・夏

JR西日本

小野田

浜河内→長門本山

1.0

 長門本山行き始発列車で体験。終点1つ手前の浜河内でおばさんが下車し,車内は私1人に。しかし,侘しさを感じる間もなく,終点・長門本山に到着。

15

2004・夏

伊予鉄道

横河原

愛大医学部南口→横河原

0.8

 高浜発横河原行き始発列車で体験。終点直前の愛大医学部南口で私を除く全員が下車。しかし,乗客1人の侘しさを感じる間もなく,終点・横河原に到着した。

16

2004・夏

伊予鉄道

本町

本町6丁目→本町3丁目

0.9

 午前10時半ごろの列車で体験。松山の市街地を走るにもかかわらず,私1人だけを乗せた路面電車は本町6丁目を発車。しばらく乗客がいなかったものの,本町3丁目でようやくおばさんが乗ってきた。

17

2005・夏

神岡鉄道

神岡

奥飛騨温泉口→神岡鉱山前

3.0

 午後6時半ごろの列車で体験。始発の奥飛騨温泉口から乗車したのは私1人だけ。神岡の市街地を1人寂しく走り抜けた後,神岡鉱山前でおばさんが乗車。そのまま終点・猪谷まで乗客2人だけだった。

18

2005・夏

くりはら田園鉄道

くりはら田園鉄道

細倉マインパーク前→鴬沢工業高校前

1.9

 午後4時ごろの列車で体験。誰も乗せずにマインパーク前にやって来た列車は,私以外誰も乗せずに折り返しですぐに発車。が,次の高校前で高校生が大勢乗り込み,車内は賑やかになった。

19

2005・夏

くりはら田園鉄道

くりはら田園鉄道

荒町→石越

1.6

 ↑の列車は,駅ごとに乗降を繰り返して進むが,少しずつ車内は閑散としていく。そして,終点直前の荒町でついに最後のおばさんが下車し,終点・石越には私1人が降り立った。

20

2005・夏

紀州鉄道

紀州鉄道

御坊→西御坊

2.7

 午後2時前の列車で体験。JR紀勢本線で御坊に到着,それを待ってすぐに発車した列車には他に誰も乗っておらず,そのまま終点・西御坊まで1人だった。

21

2005・夏

紀州鉄道

紀州鉄道

西御坊→市役所前

0.3

 午後3時過ぎの列車で体験。行き(↑)と同じく帰りもまた1人か,と思い始めた瞬間,1駅目の市役所前で初老の男性が乗車。その後も各駅で数人ずつ客を拾い,終点・御坊に到着。

22

2005・10月

JR北海道

宗谷本

幌延→下沼

7.8

 幌延発稚内行き始発普通列車で体験。おそらく他に客はいないだろうという予想通り,私1人だけを乗せて発車。下沼駅で私を下ろした列車は,むなしく空気輸送状態で稚内へと向かっていった。

23

2005・10月

JR北海道

宗谷本

豊富→下沼

8.7

 稚内発始発普通列車で体験。豊富駅で数人の高校生を一気に降ろし,車内は私一人に。が,次の下沼駅で男子高校生が乗車し,1駅区間で記録は途切れた。

24

2005・10月

JR北海道

宗谷本

問寒別→天塩中川

13.9

 糠南駅にも停車する午後の上り普通列車で体験。安牛駅から乗車したところ,車内にいたのは男性一人のみ。その男性は問寒別で下車し,車内には私1人となった。その私も天塩中川で下車,この列車は誰も乗せずに去っていった。

25

2006・冬

JR北海道

留萌本

深川→峠下

28.3

 下りの始発列車で体験。まだ暗い中,案の定というか他に誰も乗せずに深川駅を発車。途中,石狩沼田駅に停車するも乗客ゼロ。唯一の乗客である私は峠下駅で下車し,むなしく空気のみを乗せて山を下っていった。

26

2007・10月

JR九州

唐津

西唐津→唐津

2.2

 西唐津発伊万里行きの下り午後一番列車で体験。始発の西唐津駅の段階で他に誰も乗客おらず。しかし,次の唐津駅で数人が乗車して以降は終点の伊万里まで常に一ケタ台の乗客を辛うじて維持した。

27

2008・5月

京阪電気鉄道

石山坂本

石山寺→唐橋前

0.7

 夕方に体験。わずか4人の乗客を乗せて浜大津方面からやって来た列車は,終点・石山寺駅で2分間停留したのち大急ぎで折り返したが,折り返しの乗客は私のみ。次の唐橋前駅で新たに2人が乗り込み,記録はわずか0.7kmの短命に終わった。

28

2010・冬

鹿児島市営

第一期

朝日通→水族館口

0.5

 土曜の朝に体験。鹿児島中央駅前電停から乗車した時にはそれなりの客が乗っていたが,鹿児島市中心部を通過するうちにどんどん下車。朝日通電停でついに私一人となった。が,その私も桜島に渡るため水族館口電停で下車。心ならずも記録はわずか0.5kmに終わった。

29

2010・5月

JR西日本

三江

沢谷→石見都賀

14.6

 江津発始発列車で体験。途中駅から乗って来た高校生達は粕淵駅で下車し,乗客は私以外に男性1人だけとなった。その男性も沢谷駅で下車し,乗客1人状態に。「このまま口羽辺りまで記録が続くか」と思いきや,石見都賀駅で大量乗車があり(10人程度だが),あえなく記録は途絶えた。

30

2011・2月

阿佐海岸鉄道

阿佐東

甲浦→宍喰

2.4

 上記12.と同じく,海部で特急列車と接続する午後4時ごろの列車で体験。ただし,前回と違って,宍喰でおばさんが一人乗車し,記録は1駅区間で途切れた。

31

2016・1月

JR北海道

石北本

金華→西留辺蘂

3.5

 夕方の金華始発網走行きの列車で体験。金華駅は今年3月の廃止が決まっており、利用者は皆無に近いにもかかわらず始発列車が設定されているのは、利用者の多い東隣の西留辺蘂駅に折り返し設備がなく、金華折り返しとせざるを得ないためと思われる。それを証明するかのように、西留辺蘂駅から多くの高校生が乗り込み、記録は1駅区間で途切れた。

32

2018・春

JR東海

紀勢本

大曽根浦→賀田

15.2

 平日朝に体験。亀山始発のこの列車にはそれなりの客が乗っていたが、私が乗車した尾鷲駅で大半が下車。唯一残った女性も、次の大曽根浦駅で下車し、乗客1人状態に。その後はしばらく駅に着いても乗り降りはなかったが、賀田駅でついに乗客が現れ、記録は途切れた。

 

こうしてまとめてみると,「乗客1人」を体験するケースは,だいたい次の4つに分類できることが分かります。

 1.朝の市街地→郊外行きの列車(No.6,10,14,15,25,29,32)
 2.夜の郊外→市街地行きの列車(No.1)
 3.人の行き来の少ない峠越え区間(No.2,3,9)
 4.そこそこ本数の多い路線(No.12,16,20,26,27,28,30)

これらに該当する列車に乗客が少ないのは,ある程度は仕方ないのかもしれません。

乗客が少ない条件を備えているからです。さすがに,「まさか自分1人だけとは!」とは思うけれど。

 

そうなると,上の4パターンのどれにもあてはまらない列車が気になります。

No.5,13,22,31は,おそらくこの先・釧路や高知,稚内,北見に向かうにつれて客が乗ってくるのでしょう。

この2つは,ある区間で客がいなかったとしても,まあしょうがないと思えます。

No.11,17,18,19,21,23は,途中から(まで)は乗っていたので問題なし。

 

で,残るNo.4,7,8,24はいったい何なんだろう? しかも全部JR北海道宗谷本線。

もともと普通列車は1日5本しか走らない区間。1本1本がかなり貴重な列車のはず。

しかも乗客1人を体験したのは全部真昼間。

なのに,ローカル線のお得意さんである高校生すら乗っていない。

乗っているのは,鉄道ファンばかり。しかも1人とか2人とか。場合によってはゼロ。

土曜日には高校生が利用するのかもしれないけれど,これじゃ何のために走っているのか分からない。

なぜ走るのか,なぜ走ってくれるのか,乗っていて本当に不思議だった。

「JR北海道,JR宗谷本線,こんな状態でやっていけるのか?」とも思った。

 

でもそこが鉄道のすごいところであり,魅力でもあるんだろうな,とも思う。

客がいようといまいと,どんな辺鄙なところでも,駅がある限りは時刻表通りに到着し,発車していく。

ひとたび列車に乗り込めば,行きたいところまで確実に連れていってくれる。

 

こんなにけなげで律儀な姿を見ていると,いつしか鉄道に対する感謝の念がこみ上げてきます。

こっちは金を払って乗っている客なのだけど。

 

「乗客1人の記録」は,「鉄道の偉大さを感じた記録」でもあるのかもしれません。

 


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