|
大隅横川(JR九州・肥薩線) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
1.駅舎(正面から)
2.駅舎内
3.吉松方面から迎えにやって来た列車 |
【駅概略】 JR吉松駅から肥薩線を南へ2駅,14.0kmの地点にある無人駅。2面2線のホームを有し,開業当時からの木造駅舎が100年を経た現在もほぼそのままの姿で残っている。以前は普通列車のみの停車だったが,肥薩線が観光路線として整備されつつあることもあって,現在は特急列車「はやとの風」も停車している。ホームの柱には第2次世界大戦中に機関掃射で撃ち抜かれた穴が残っている。
【駅データ】
【停車本数データ】
【訪問記】(2006年9月) 矢岳駅から観光列車「いさぶろう1号」に乗車。吉松で特急「はやとの風1号」に乗り換えさらに揺られること15分,大隅横川駅に到着した。 大隅横川といえば木造駅舎だ。100年以上前に建てられた木造駅舎が今もほぼそのままの姿で残っている。何かの痕跡とか古色蒼然としたものに目がない私にとって,大隅横川駅はこの上なく魅力的な駅のはずである。なのに,なぜかいまいち魅力を感じない。その理由を考えてみるに,この駅舎自体がすでに観光地化されているからだろうという結論に至った。この古老駅舎は数年前までは確かに「残っていた」のだろうが,現在は「残している」感がある。残そうとして整備・保存の手を施された駅舎は動物園に飼われたトラのようなもので,本来持っていた貫禄や本性を失っている。やはり駅や駅舎はあるがままの姿で「残っている」のが最も素晴らしく,最も味わい深いだろう。 ・・・・・・とまぁ,愚痴めいたことを書いてしまったが,一介の鉄道ファンとしてやっぱり訪問しておきたい。今回は時間の都合もついて,うまい具合に訪問できる。ので,結局降りてみたのだった。 まずは駅舎の中をくまなく見てみる。味わい深い待合室はもちろんのこと,駅員室の内部まで見える。昔ながらの駅舎が残っていてもカーテンやベニヤ板などで隠されていることが多いのだが,ここはどうぞご覧くださいと言わんばかりに開けっ放してある。これも観光地化の一環だろうか。 ホームに出てみる。木造の柱が屋根を支えているのだが,そのうちの一本に孔があいている。下にこれまた木製の案内板があり,第2次世界大戦中に機銃掃射で撃ち抜かれた由。当時はこの肥薩線にも長大編成の貨物列車なんかが走っていて,この駅に停車中に狙われたのだろうか,などと想像してみる。それにしてもなぜこんな無人駅の柱にできた小さな孔にこんな立派な木製の案内板がついているのだろう,とも思う。これも観光地化の一環だろうか。 そうこうするうちに早くも迎えの列車の時刻となった。浮島のような下りホームに移動し,大きく深呼吸をする。と,大隅横川駅の全景が目に飛び込んできた。非常に味わい深い木造駅舎に草が繁茂した線路。そしてホームで我々と同じ列車を待つ一人の女性。今になって,全てが味わい深く,何もかもが好ましく感じられてきた。どうしてかはよく分からない。よく分からないけれど,大隅横川駅が本当にいい駅だからだろう,と思う。ここまで何かと素直になれずに何かと邪推し,何かとうがった見方をしてしまった私だが,最後の最後で大隅横川駅自身に諫められたような,そんな気がして,大いに恐縮した。 |
ホーム > 途中駅の情景 > 大隅横川 |