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  宇都井(JR西日本・三江線)

1.駅全景

 

2.駅近景

 

3.ホームからの眺め

 

4.三次方面から迎えにやって来た列車

【駅概略】

JR口羽駅から西に2駅,4.9kmの地点にある無人駅。三江線のこの区間は山間部を貫いて走っているため,1面1線の簡素なホームと待合室がトンネルとトンネルの間のわずかな谷部を利用して地上から高さ30mのところに設けられている。そのため,駅を利用するには116段の階段を上り下りしなければならず,「天空の駅」として知られている。駅周辺には小さな集落が広がっている。

 

【駅データ】

駅名

宇都井(うづい)

所在地

島根県邑智郡邑南町宇都井
駅周辺の地形図
へ(国土地理院提供)

開業

1975年8月31日

乗降客数

駅名のルーツ

「内居」からウツイか,あるいは江の川の「渦」か。

 

【停車本数データ】

1976年2月

4往復

1987年4月

4往復

2010年3月

4往復

 

【訪問記】(2010年5月)

浜田駅前に1泊した翌朝,早起きして5時34分発の山陰線上り始発列車に乗車。5時58分に江津に到着し,6時02分発の三江線の列車に乗り換える。

今日はゴールデンウィークも終わった5月の平日。18きっぷが使えないこともあり,車内に鉄道ファンとおぼしき姿はない。私のほかに初老の男性のみを乗せた単行列車は,定刻に江津駅を発車した。

列車は江の川に沿って行く。スピードはあまりに遅い。人家のない無人地帯を走り,たまに現れる小さな集落にある小さな無人駅に停車しては誰も乗り降りさせずにすぐに発車する。それをけだるく繰り返す。

途中から駅ごとに高校生が乗ってくるようになり,しかし座席を埋めるにはいたらず,石見川本駅で下車してしまう。しばらく進んでまた高校生が乗ってくるようになるも,今度は粕淵駅で全員下車してしまう。結局,車内に残ったのは,江津駅から乗ってきた初老の男性と私の2人だけであった。

粕淵の次の浜原駅から先は,三江線の中で最後(1975年)に開通した区間で,線形が良い。心なしかスピードも乗り心地も上がった気がする。しかし,そんな中,件の男性は沢谷駅で下車してしまい,車内には私一人取り残された。今まで以上に超然とした雰囲気を醸し出しながら,我が単行列車は相も変わらず江の川に沿って進んでいく。

沢谷駅から3つ目,石見都賀駅で大量乗車(10人程度)があり,車内は活気を取り戻す。そんな中,私は次の宇都井駅で下車した。時刻は8時17分。

宇都井駅のホームは地上30mの高さにあり,「天空の駅」として有名である。トンネルとトンネルに挟まれたホームに降り立ち,乗ってきた列車が行ってしまうと,目の前に宇都井の集落をのぞむことができる(写真3)。山間部の狭い谷あいに,赤い瓦を載せた民家が並んでいる。青二才が知ったかぶった言い方をすると,これぞまさに日本の山間集落の原風景といった面持ちで,なんだかほっとする。

ホームから綺麗に整理整頓された待合室に入り,そこから続く階段を地上に向けて下り始める。ものの本によると,116段あるそうだ。エレベーターなどはもちろんなく,階段を使うほかない。

のんびり階段を下りて,ようやく地上に到達。今来たほうを見上げてみると,5階建てマンションの非常階段のようなものが主のマンションを失ったかのように孤独に空に向かって伸びている(写真2)。帰りはこれを上るのかと思うと,見ているだけで疲れてきそうだ。日常的に駅を使っている地元の方々はさぞかし大変だろうと思う。

時刻は9時過ぎ。迎えの列車は11時ちょうどなので,まだ2時間ある。今から駅周辺の散策に出ようと思う。地図を見ると,宇都井駅の南西には中郷,上郷,小林,今井といった集落があり,宇都井駅を起点に11時までにぐるっと回って戻って来れそうだ。

まずは中郷を歩く。駅から続く1本道の上り坂の両側に民家が並んでいる。途中,教尊寺というお寺の前に小さな橋があり,渡った先に学校のような建物が見える。・・・が,なんだか生気が感じられない。嫌な予感がして駆け寄ってみると,それはすでに廃校となった阿須那小学校宇都井分校の跡だった。

さらに進み,上郷と小林を散策する。このあたりは何でもない山間集落だが,石垣を用いた棚田が広がる中に赤い石州瓦の民家が点在しており,非常に美しい。私はこの何でもない集落に何度もカメラを向けた。

ちょっとした峠を越えて,今井に入る。ここからは金井谷川に沿って宇都井駅への下りとなる。気分よく下り,あと5分ほどで宇都井駅に到着するというところで,前方にお年寄りが2人,手押し車を押しながら私と同じく坂道を下っているのが見えた。私のほうが歩くスピードが早いので,あっさり追いついてしまう。相手は全然知らない人なので,無言で追い抜いていけば良いはずだが,こういう集落の人たちがみな知り合いで,観光客も来そうにないようなところでは,私はかなり怪しい人物に見えると思われる。ので,軽く会釈をして通過することにした。

駅に戻る。時刻は10時25分。まだちょっと時間があるので,駅の東にある宇都井大橋まで行って江の川を眺めたりする。そこから駅に戻りにかかる途中,田植えの終わった水田に宇都井駅の全景が映っていた(写真1)。逆さ富士ならぬ「逆さ宇都井」といったところか。宇都井駅の全景は何枚も撮ったけど,この季節はこの角度からが一番美しいように感じられた。

ついに時間となり,116段の階段を上がってホームに出る。・・・と,さきほど会釈を交わしたお年寄り2人がホームで列車を待っていた。さっき追い抜いたのは10時20分ぐらいのはずだから,あれから40分後の列車に乗るためにすでに駅に向かっていたことになる。私ならあの場所から5分で駅に到達し,3分で階段を上っていけるから,あの2人は私の感覚からすればかなり余裕をもって駅に向かっていたことになる。やはりお年寄りにとってこの階段はかなりシンドく,列車に乗るのは一仕事なのだろうなと思う。

そんなことを考えているうちに,迎えの列車がトンネルの中から到着し(写真4),地元の方々と一緒に乗り込む。こうして大満足の2時間43分を過ごした宇都井を後にした。


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